火入れに関する私的考察


 オーブンを作ったときに、様々な本などで紹介されている火入れのレシピが、思いのほか適合しなかったので、 火入れをされている竹がいったいどんなふうになっているのかを実験してみました。その結果、「へーえ」と へんに納得してしまう知見が得られましたので、試験の一部を紹介します。
なお、この実験は、竹の内部温度の変化を調べただけですから、この結果がそのまま火入れのレシピになることは ありません。


材料と方法
試験方法  竹は、なるべく数多くのデータを取りたかったため、乾燥したマダケの主茎の梢に近い部分を仕様しました。
内径が約4mmの部分の節間部を、長さ12cmに切断し、内径をドリルで4mmに調整しています。また、竹の肉厚の平均値は3.1mmです。
この竹のテストピースは熱の回り込みを避けるため、図のように処理し、温度計のプローブを差し込みました。 この竹を、サーモスタットにより175度に調整された(この際、外気温の精度はどうでもいい)オーブンに入れ、 30秒ごとに温度の上昇をを計測し、10分後に外に出して放置し、引き続き温度の下降を計測しました。なお、 試験は、7区制で行っています。

結果と考察
 計測した竹内部の温度変化を下の図1に示しました。
竹の内部温は、投入と同時に温度が上昇しますが、100度近辺で上昇が鈍り、その後再び上昇をはじめます。 テストをした竹は、褐色から暗褐色とバラバラの仕上がりでした。 結果はこれだけです。
 
 以上の結果から次のことが考察されます。
物質を加熱した場合、図2のような曲線を描いて温度が上昇していくのが一般的です。にもかかわらず、本試験では 100度近辺で上昇が鈍ることから、水の気化熱によって温度上昇が妨げられていることが推察されます。
つまり、竹の温度は、水が蒸発するときに大量の気化熱を奪っていくので、温度が上がりにくいということです。 そして、水分が少なくなってきて、それにともない奪われる気化熱が少なくなってくると、再び温度が上昇すると いうことになるのです。




図1 竹内部の温度変化



図2 温度上昇のモデル



おまけ

 この結果からなにが言えるのかと疑問の声があがろうかと思います。
確かに、ここで明らかにしたことは、火入れに関してホンのわずかなことでしかありません。 とりあえず言えることは、竹の内部温度は、水分が激しく蒸発している状態では、100度以上 にはならないことが解った程度です。しかし、そこから膨らませていくと、この100度は間違いなく ボーダーであるようです。ボーダーラインの前では、100度以上にならないのですから、例え かなりの高温環境に置かれたとしても、それは水分が抜けるだけになるのでしょう。
そして、ボーダーラインの後は、温度がどんどん上がるので竹の変質が起きるわけなんでしょうね。 そして、この温度が上がっている途中で火入れを終了しなければならないようです。

今回のような小さなテストピースで、すべてを推し量ることはむずかしいと思います。 でも、竹の中でなにが起きているか、少し解って「へーえ」といった感じなのです。


ところで、火入れって何者なんでしょうか?どのへんが理想なのでしょうか? それが問題です。

 

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