フィラー加工の治具(溝入れ編)



フィラーの溝を切るときに、ルーターを使っておりました。教科書どおりですねえ。でも、正直言って、あの作業は「高速回転する刃物に手を近づける」行為でして、おっかないことこの上ないのです。ふと見ると、ボクの工房にはフライス盤がございます。お世辞にも高速回転はしませんが、ルーターとよく似た行動をしておりますです。そんなわけで、フライスを使って溝を切ることにしましたです。なんてったって、刃物に手を近づけなくても品物を送ることができますので、だいぶケガとは遠ざかることになるはずなのです。


構想
そんなわけで、例によって分析してみます。
ルーターとの最大の差は、高速回転しないということになるかと思います。高速回転することのメリットは、切削速度が速いので、品物の送りを早くしても(つまり手作業のようなラフな送り)切削面があれないということになるかと思います。少しつっこんで言いますと、ワークが木で、柔らかく、切削スピードが上げられるから高速回転していても不都合はないわけです。
とりあえず、これはフライス盤の場合、送りはゆっくりできるので大きな問題ではないでしょう。

そして、ゆっくりと切削することのデメリットはなにか考えて見ます。金属や樹脂と違って、木材は粘りがありません。つまり、かけたりむしれたりしやすいと言えるでしょう。切削速度が速ければ、木がそのスピードに付いていけず、かけにくくはなりやすそうです。これを解決するためには、刃物の切れ味は重要でしょうね。しかし、ボクの刃物は超硬なので、特に曲面を研ぐのはほぼ無理です。むしれたりかけたりするということは、切削された切り粉が丈夫で、切削されるとき、ワークのほうまで影響するから起きるのではないかと推測されます。となると、切り粉をよわっちくすれば良いわけで、単純に考えれば、切削量を少くすれば良いということになりそうです。そう言う点では、フライス盤は送りが自由自在ですから、切削量のコントロールも容易ですので、なんとか解決できそうです。ケガにはかえられませんです。

というわけで、フライス盤を使うとどうやらフィラーに溝が切れそうだと結論を得まして、実際に作業すべく、治具を作ります。

とりあえず、ルータの時のように、フィラーを治具ごとあつかうというのは、フライス盤では無理のようです。そういったわけで、治具はテーブルに固定してしまうように考えます。
さらに、加工する基準をどこにするか考えます。ルーターの時は、中心の穴を基準にしていましたが、木の種類によっては、貫通している穴が直線でないことはしょっちゅうあるわけでして、基準とするには、いささか不安定な要素を含んでいます。特にボクはフィラーにボルトを通した状態で外周加工をしないので、その不安定要因はさらに増幅されているわけです。
となると、フィラーのブランクで最も安定した部分はなにかと考えると、やはりフィラーの外周になると考えられます。ということで、基準面は外周とすることにします。

そんなことを含めつつ、治具を作ってみました。ちょっと硬めのカシの木でできています。
すごく簡単でしょ(笑)しかし、ここにたどり着くまでに、何個「駄治具」を作ったことか…。

基準面を外周にし、かつ作業が治具に対して横に力が加わる状況になりますので、円弧に溝を入れて、フィラーのあたる面をなるべく増やして摩擦を稼ぎます。これは、フィラーが加工中に刃物に蹴られて傷つくことも防止してくれます。さらに横ずれ防止に、蹴られる方向側は溝を途中で切るのを止め、引っかかって完全にずれないようにしてあります。フィラーの固定は、L字に曲げたネジで治具の後ろから引っぱって固定してやることにしました。
実際の加工場面がなくて申し訳ありませんが、ボクはこの治具をバイスにくわえて、3回くらいの切削で、おおむね2mm強の溝を切っています。

全景 こんな感じです。
こんな具合に治まります フィラーのブランクを治めた状態です。実際の加工では、この手前側に刃物があります。
横から見た図 横から見るとこうなります。円弧の溝ですが、r=9とr=8の2段で切り、段差をヤスリで落としています。
末端 溝の末端(刃物で品物が蹴られる方向)は、品物が引っかかってずれてしまわないよう、こんなふうに処理しています。

ルーターの時には、しばしば切削中にフィラーが回ってしまうトラブルがありましたが、この治具にしてから、フィラーが回ることは決してなく、失敗もほとんどなくて済んでいます。


いかがですかあ?感想をお待ちしておりマスです。

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