乾燥ブースの作成



はじめに:
冬になりますと、塗装がなかなか乾燥しないので、つらい思いをする方も少なくないと思います。
「乾いたかなあ??」とおそるおそるさわってみると、たいてい乾いていないので、何度もブランクに指紋をつけてしまう。そんな経験は誰しもあるはずです。

それはともかく、そんな状況を打破するために、乾燥ブースを作ることにしました。
なお、この作品につきまして、重要な情報をいただきましたClarisさんには、この場を借りて深謝申し上げます。

塗料乾燥のメカニズム:
塗料のように、樹脂を溶剤で溶かした類のモノは、その溶剤が揮発することによって、樹脂だけが残った状態になり、それが乾燥した状態なのだと思います。では、塗料の乾燥する要因を考えてみますと、揮発するための熱が必要なのはよくわかります。ですが、もっと重要なファクターがあってもよさそうです。

これは、二日月堂 Clarisさんと塗装の議論をしていて、そのときに出てきたことなのですが、「塗料が乾燥するためには、温度よりも風が必 要である」という結論に至りました。確信を得たきっかけですが、 Clarisさんの作成した塗装装置では、送風することによって熱源の電球が必要なくなり、かつ、乾燥時間の大幅短縮になったという事実からです。
このことから以下のことが推察されました。
・ 塗装の乾燥(溶剤の揮発)に必要なモノは、新鮮な空気である。
・ 温度は、室温程度なら加温の必要はない
そんなわけで、それぞれの意味を考えて見ました。

新鮮な空気:
このことは考えてみれば実に単純な話です。洗濯物の乾燥機には、空気を循環させているモノはないですよね。つまり、揮発した溶剤が空気の中で飽和に達すると、それ以上揮発しなくなるということなんでしょうね。だからいつでも空気は新鮮なモノが必要なのでしょう。
しかし、注意しなければならないのは、必ずホコリのないクリーンな空気を使わなければならないのは言うまでもありません。
温度:
温度は、室温程度なら加温の必要性がないと言いましたが、加温することによるメリットもありそうです。しかし、それは「揮発のスピードを 速める」というのではなく、気温を上げることによって、相対的な湿度を下げる効果のほうが期待できるのではないでしょうか?
ですが、気温をいたずらに上昇させると、気泡ができるので注意したいですねえ。



 そんなわけで、この仮説を信じることにしまして、塗装の乾燥のためと、ついでに、接着時の熱処理をするためのブースを作ってしまうことにしました。
当初、いただきモノのCPU冷却ファンと、バイクのエアフィルタ、電球とを組み合わせて作成したのですが、あまり材料が一般的でないこともあり、実のところご紹介していませんでした。また、今まで火入れ用のオーブンでやっていた接着の熱処理にも使えるモノということで、さらに温度を上げることのできる第2号の作成をしましたので、遅ればせながらご紹介させていただきます。なお、修理したデジカメをまだ受け取りにいってないため、写真はありませんが、そんなに複雑なものではないので、ご容赦ください。

温風機を考える
さて、ここで求められるのは、ほこりの入らない空気を送ることができる温風機が必要です。この温風機ですが、都合の良いモノがございます。一般名では「ふとん乾燥機」といわれておりまして、タイマーと、それなりのフィルター、ご丁寧に蛇腹のダクトまで標準装備でして、しかも室内で使うモノなので、運転音が静かなのです。まさに「このために生まれてきた道具」と感じてしまうのであります。若干フィルターに非力な感ありますが、大きなホコリは除去できますから、必要にして充分だと考えています。
そして、今回、この「温風機」は、ふとん乾燥機としての機能をそのまま温存してありますので、いつも、何かを壊しているように見えていたお父さんが、家族から冷たい目で見られることがないというメリットもあります。(笑)


ブースについて考える
ブースの構造  次にブースです。ご覧の通りただの箱です。左上:上から、左下:正面から、右:横からみた図です。
気密性はラフでも問題ありませんが、運転時に、ダクト取り付け口の隙間から空気が吹き出すようにしなければなりません。つまり、全ての隙間から空気が出てくるようにする事が、この装置の「肝」なのです。それさえ守られていて、気温に耐えられる素材であれば、何でも良いと思います。この原理は、クリーンベンチと同じで、フィルターがしっかりしていれば菌だって入れません。(一般的にわかりにくい例えですねえ)
ちなみに私の作ったブースの材質は合板で、そのまま縦に切断したので1800mmの全長があります。
 隙間から空気が吹き出している限り、このブース内にホコリは侵入しません。しかし、ふとん乾燥機接続に際し、一つだけ注意しなければならないことがあります。特に箱の上と下の部分につなぎますと、いわゆるベンチュリー管のような効果が出て、ダクトとブースの隙間から外気を吸い込んでしまうことがあります。これを手っ取り早く防ぐには、排気口をある程度絞ってやるだけで大丈夫です。
これを応用して、clarisさんのように、Maxさんとこのドレンディップのシステムと組み合わせることも可能ですし、むしろその組み合わせのほうがおもしろいと思います。
もちろん、気密性を高くして排気口から屋外に排気してやれば臭いも出ませんね。でも空気を換気扇などで引くと、きっとホコリが入りますからやめておいたほうが良いと思いますよ。


運転してみる
実際にこれを使って乾燥させる方法ですが、じつに簡単です。右がそのイメージになります。

まず、ウレタンなどの塗料の場合は、温風を使いません。ただの風を送ってやるだけです。どうしても温風が送りたい人は、少し離して電気ストーブでも置いて、その温風を吸い込ませるくらいにしてみて下さい。気温が20度くらいあれば、速乾ウレタンなら2時間くらいでさわれるくらいにはなります。

さて次に、エポキシの熱処理では、温風を使ってやります。モノによって、熱処理の温度が違いますが、おおむね60度くらいに温度をあがるように排気を調整しておいてやると最大公約数になると思います。
いずれの使い方でも、タイマーが付いていますから勝手に止まってくれるというのがたいへん便利でして、また、なんらかのトラブルがあっ て、異常な高温になった場合も自動停止してくれます。(機種によると思いますが・・)
ブースイメージ


最後に
 なお、この記事は、ふとん乾燥機の逸脱した使用を推奨するものではありません。ご覧のみなさんが、このことにより損害を受けたとしても当方といたしましては、一切感知いたしませんので、ご承知おき願います。あしからず。
家電は、正しく使いましょう。



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