ラッピングについて



はじめに:
竿の仕上がりを左右するラッピングですが、面倒な作業と言えるでしょう。そんなわけで、少しでも楽にできるように考えてみることにしました。

ラッピングの本質:
ラッピングとは、糸を巻いていくことであります。ゆえに、糸の後処理とかは考えないで、「均一に巻く」ということについてのみ分析します。
 きれいに巻くためには、むらがないようにすると言うのはみんな知っていることだと思います。しかし、このムラのないように巻くのは厄介なので、ひとまずラフに数回転巻いてから、爪などで糸を押しつけてムラをなくす方法を取っているのではないでしょうか?
しかし、この方法のネックとしては、糸の間隔を狭める方向での修正であるので、どうしてもブランクと糸に物理的な影響を与えてしまう要因(ささくれるとか)になってしまい、どう考えてもあまり良いことではないと思うのです。それに、糸密度(そんな言葉があってもいいかな??)が均一でないと、コート材のしみこみ方にムラがでますんでねえ。そうそう、しみこむムラと言う点では、手油もやっかいな存在です。 そんなわけで、均一に巻く方法といたしまして、資本投資をしてラッピングベンチを導入することが選択肢の筆頭にあがります。修行するのは面倒なので、この程度しか思いつきませんです。ともあれ、こいつは便利な道具みたいですよね。ですが、私には買えないので、この際ニュータイプを作ることにします。

構想してみる:
 ラッピングベンチはたいていの場合、竿を置く場所と、スレッドを置く場所(テンショナーを含む)で構成されております。竿を置く場所はそんなに構造的に複雑ではないので、設計で優先すべきところではないでしょう。このたぐいのモノは、「シンプルなほうが良い」にちがいないので(きっと)、モータでブランクをブン回すようなことはやめておきます。そうすると、あとはテンショナーを含むスレッドを置く場所になります。この部分の構造は、糸が出るところが半固定式になっていて、テンショナーがついているということです。糸口が半固定式になっているということは、スレッドを巻く位置に任意に固定することを目的にしているのだと思います。また、テンショナーはスレッドを一定のテンションをかけてやるための道具になるのでしょう。どうやら、この部分がラッピングベンチの肝になるようなので、この機能はきちんと押さえておきたいものです。

ここで一つの疑問が持ち上ります。ラッピングの風景では、手でスレッドを持って、作業が行われているような気がします。私にとって、これを見る限りテンショナーの意味がよくわからないんですが・・。まあそれはそれとして、こういうことは深く考えずにさっさと次に行きます。

さて、テンションを一定にするためには、どうしたらよいか考えてみます。まず、テンショナーですが、市販のベンチには、ミシンなどに使われているようなテンショナーを使っている例が多いようです。また、本などを見ますと、スレッドのボビンの縁に抵抗を与えて、テンションをかけている例もあります。このボビンの一部に抵抗を与える方法としましては、私を含めて、多くの方がやっているように、タイイング用のボビンホルダーを使うことも含まれると思います。たしかに使っていて便利だし(欲を言えばきりがないが・・)新たに作るのも面倒なので、これを利用することを前提に考えます。

いきなり否定的に始まりますが、残念なことにボビンホルダーは糸が程良く止まっていることを目的としておりまして、一定のテンションをかけて糸を引き出すための道具ではありません。それに、テンションを調整することがあまり得意ではありません。そんなわけで、このボビンホルダーをテンショナーのような形で利用することはあまり得策ではないように思えます。このへんは解決しておくべきことでしょう。

そこで、一定のテンションとは何か?原点に立ち返って考えて見ますと、糸をどれだけ引っ張ってあるかということになります。つまり、ロッドブランクとボビンホルダーのひっぱりっこの関係を作り出してやることなのです。単純に考えれば、このテンションはブランクにボビンホルダーを吊り下げてしまえば良いわけです。この方法は、もともとフライを巻くときにはそうして使っている、いわば「王道」なわけですね。そんなわけで、テンショナーに代わって、ボビンをぶら下げることでテンションを生み出す方式を採用し、新たにベンチを作ります。


ぶら下げるということから、形はどうあれ、真下からスレッドが供給されるようになるわけでして、ベンチの下側はなにもない方が良いということになります。しかし、単純にボビンホルダーをそのままぶら下げてしまいますと、どうしても糸のよりをほぐす方向に回ってしまいます。ということで、この回ってしまわないようにする仕掛けは必須になりそうです。また、どうしても一度に巻ける量が机の高さまでに限定されるということもあまり良い条件ではありません。

ということを考慮しまして、作ってみました。


新型らっぱー:
全景
簡単に説明しますと、ボビンをちょいと引っかけておく場所を作っておいて、スレッドにおもりをぶら下げてテンションを作ってやります。そして、丸棒にワイヤをらせんに巻き、たくさんのスレッドのガイドを作ってやるという構造です。全景

このベンチですが、なかなか面白い性質を備えておりまして、ラップ中にブランクから手を離しますと、みんなほぐれてしまいます。(当たり前ですが)そんなわけで、一休みするときのために、クリップをちょこっと引っかけられるようにしてあります。しかし、ほぐれてしまうことは欠点ではございません。言い返せば、ちょっと気に入らないラップだったら、すぐに戻ってまき直せるということになります。そして、もうひとつ、ブランクが空転しないようにさえしておけば、手を離してもスレッドのテンションはかかったままなのです。つまりゆるまないと言うことになります。これは、従来品にはない機能(だと思う)で、まさに「第3の手」に匹敵すると自画自賛しておりますです。

こんな感じで使いますです この効果は、そのほかにも捲きはじめはもちろんのこと、まき終わりのときにも発揮されまして、モノフィラの糸を引いてくるときに、スレッドが引っ張られたままキープされます、そのため、両手でコントロールできまして、実に快適でございます。重力は全ての物に平等にかかっておりますのでねえ。

たくさんのスレッドガイド  そして、スレッドのガイドを多数設け、固定式にしました。実はこれも「ミソ」だったりします。ガイドがじゃまになるとかで、スレッドの供給位置を変えたいことは良くあることです。従来のラッピングベンチでは、ネジをゆるめないとできなかったわけですが、この方式ですと、スレッドをつまんで、掛け替えるだけで、即座に対応できます。もちろん、スレッドの掛け替えを行ってもテンションは維持されています。なお、糸がらせんのガイドにひっかかるなんて野暮なことは言いっこなしですよ。触れているのは一部なので、ほぼ、その心配はないですから。

 さらに、このスレッド供給場所の位置も一つのポイントです。ガイドをベンチから若干離した、斜め下方向へ設置しています。この位置ですと、ブランクまでの距離も十分ありますし、なんといっても「今、まさに巻いている部分が正面に見える」というのが精神衛生上よろしいのであります。スレッドを乗り越えたりしたのはすぐわかりますし、ガイドの足を越えるときなども、なんどでも短時間でやり直せます。

 次に、スレッドの「より」を戻さないためと、一度に巻く量をある程度確保するために、ボビンから出したスレッドを錘で折り返してから巻くようにしてあります。折り返してやることで、よりとは無縁になりまして、スレッドの量はベンチから錘までの距離の2倍が確保されるということになります。

なお、錘には、ガイドとしてヒートンを使ってあります。最初は滑車にしたのですが、細かいところにスレッドが入り込んでしまい、けっこうトラブルが起きたのです。もちろん滑車のほうがスレッドの傷みは少ないでしょうが、スレッドが何度も往復するようなこともないでしょうから、問題ないと判断しました。

まわりどめのガビョウ そうそう、大事なことですが、ブランクが回らないよう、クリップをつけて、それが引っかかるようにしかけをしてあります。なんてことはない、ただの画鋲です。あまり出っ張っているとじゃまになるので、この程度のモノのほうが、扱いやすいと思います。ちなみに、ボクはガイドを仮止めするときに、このクリップを多用するので、他の人が使いやすいかどうかは不明です。

いかがですかあ?感想をお待ちしてマスです。





おわりに
 ともあれ、このラッピングベンチですが、構造上従来品と違う部分が多く、おもりを用いてテンションを生み出し、それが絶え間なく続く構造であること。そのテンションに抗うためにブランクの空転防止機能を設けたこと。スレッド供給位置を固定式で多数設けたこと。また、それらを実現するためのレイアウト、に新規性があると思っています。
この程度揃うと、すぐ特許になってしまいますんで、ここでオープンにして既知の事実とさせていただきたいと思います。つまり、ここで公開することにより、この件で特許はとれないようにさせていただきたいと思っているわけです。ネットの世界ではこういった記事がどの程度効力があるのか疑問ではあるのですが、ホビーストの楽しみが知的所有権という縛りにあわないよう、ちょっとだけうるさいことを言わせていただきたいと思います。
 誤解のないように補足しますが、「まね」をしてくれるなということではありません。むしろ、これがお気に召しましたら、どんどん利用していただければと思います。個人の発想がたくさんの人に利用されるということは、楽しいモノなんです。



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