サーモに関すること



 メールでサーモについてたくさんお問い合わせをいただきましたので、サーモスタッ トについて 私が知り得る範囲の話をしておきたいと思います。

 電熱のオーブンを作成するにあたり、サーモが付いていたりすると、極めてもっとも らしいのですが、 このサーモは万能ではございません。どうしてかといいますと、そんなに精巧に作ら れているものは、個人で手に入れられるほどの値段ではありませんし、サーモ単体にそれを 求めるのは、どだい無理だからです。

サーモの使用場面
 サーモは、その使用方法により、その作動はまちまちです。
単純に加熱を制御するサーモは、その温度に達した時に切れるように作られています し、逆に冷却 する場合は、その温度になったときに回路が入るようになっているわけです。前者 は、アイロンや 火災報知器、後者はエアコンや冷蔵庫なんかに使われることになります。
つまり、その使用される場面にあわせて使われているわけでして、サーモは、一般の人 が考えているほど、おりこうさんではないということになります。

サーモの能力  さて、サーモに限らず、温度計などでも、どうしても避けて通れない問題がありま す。
それは、 温度関係のものは、伝導率の縛りがあるため、厳密に言うと、その瞬間の温度ではな く、過去の 温度しかわかりません。つまり、加熱されている場合は温度計が暖まってからやっと その温度を 示すわけで、沸騰したお湯(おおむね100度)に温度計を入れると、だんだん温度 が上がっていき、 何秒か後に100度を示しますよね。そういったことが必ずおきているわけです。 温度を一定に保ちたい場合には、気象観測のように、じわじわと温度が変化する場合 は、 大きな問題になりませんが、一気に加熱され るような使い方の場合は、無視することができない場合もあります。 また、対象の物質がどんなものかによっても、その誤差は変わってきます。たとえ ば、水などでは、 比較的早く温度変化をとらえることができますが、同じプローブ(温度を感じる部 分)を使った場合 空気はかなり遅れて温度が表示されるのです。 そんなわけで、サーモで気温を制御するには、それなりの工夫が必要だということに なります。言い換えれば、サーモが反応し、通電を切った時は、すでに設定温度より 気温は上昇してしまっていますから、設定温度を過信しないことが重要ということに なります。
 さて、上記した反応の遅れですが、プローブや温度計には、おおむねの送れる時間が 明記されているモノも少なくありません。一般の私たちが入手できるレベルでは、 7〜20秒程度の遅れが出るモノが多いようです。


サーモの種類
 サーモスタットでもっとも精巧なものを手に入れたいのなら、それはできない相談 です。 実際、そういった制御が可能なものはありますが、お値段もかなりしますし、アマ チュアが使うのは あまり意味のあることではありません。特に、精密なモノでは熱源と組み合わされた 形で、オーブン(火入れや料理のではない)として売られていたりするので、流用と いうわけにはいかないと思います。
そんなわけで、私たちが入手できるのは、せいぜい温度計に出力端子が付いている程度のものになろうかと思います。
いわゆる電子温度計に出力があるタイプか、バイメタルのものとなるのだと思います。

オーブンへの応用
 電熱のオーブンを作った方で、一番苦労しておられるのは、いったんヒーターの電 源が切られて から、なかなか再度入らず、温度が下がってしまうということをお聞きします。
どうしてそうなってしまう のかと言いますと、原因はサーモなのです。しかし、サーモに罪はありません。なぜ なら、 そのサーモは、設定温度より上がったときに切れるようにできているからです。つま り、再度通電する ことより、本体の保護を優先しているわけです。そんなわけで、再度入るのは、かな りラフになっている つくりになっているからです。 こういったサーモは、特に暖房機具に多く使われている「バイメタル」を使用したも のに思えます。
この辺をクリアするために欲行われている方法で、切るためと入れるための接点を独立させて制御してやる こともありますが、もともとの誤差を2倍にしてしまうという副作用が伴います。
上記したような現象がどうしてもいやな場合には、温度計に出力端子が付いているタ イプを使えば 多少は改善されます。しかし、温度計を利用している定めで、かならず、サーモ本体 の電源が 必要です。また、出力端子の容量によっては、電熱器を開閉するリレーを介さなけれ ばなりません。 また、ものによっては、プローブが別売のものも少なくありませんので、一見安く見 えても、思いの外 出費がかさんでしまうこともありますから、注意が必要です。

実例
 私がHPに紹介しているサーモをなぜ選んだかお話ししておきましょう。
あのサーモですが、いわゆる実験器具です。つまり、実験室で、ラフな温度管理をす るための ものです。私はこのたぐいのことが本職だったりするので、この手のものの中から、 最も安価な 品物を選んだということになります。選択した理由として次のような条件を満たしています。
その1 本体に、ヒーターの電源をプラグで差し込むだけで良く、1KWまで電子制 御できる(つまりリレーがいらなくて、動作が静か)
その2 プローブが汎用品で、とりあえず一本付属している。(交換ができる)
その3 設定温度を中心に作動する
その4 一番安かった。


最後に
 勘違いしてほしくないのであえて書きますが、火入れをするにあたり、サーモの性 能で結果が左右されるとは 思っていません。たとえばかなり温度が下がらないと入らないサーモでも、その装置 で火入れが できるならば、なにも問題ないと思うのです。重要なのは、温度が上がりすぎて竹を 燃やさない ようにすることで、それが満たされるならば、充分なんだと思っています。 単純に、温度を一定に制御することは、手段の一つであって、火入れの条件ではない のですから。

 え、それならどうしてもっと安いサーモにしなかったのかですって?
それは、実験器具のことしか、資料がなかったからです。




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